こんにちは。神戸市東灘区御影にあるパーソナルトレーニングスタジオFitness fieldの前田です。
ゴルフスイングパフォーマンスの身体的な決定要因
NSCAジャーナル2023.6月のジャーナルからの抜粋です。(会員になると読めます)HP
要約
ゴルフでは、クラブヘッドスピー ド(CHS)がゴルファーのより高いスキルレベル、および全体としてのロースコアに関連している。CHSはスイングパフォーマンスの重要な指標である。
CHSの決定要因を理解することができれば。飛距離やパフォーマンスアップに繋がると考えられる。
はじめに
クラブヘッドスピー ド(CHS)やキャリーディスタンスといった、スイング特性を改善するためのストレングス&コンディショニングプログラムの利点への関心が高まっており、CHSが速く、キャリーディスタンスが長くなるとスコアが減少し、パフォーマンスが向上することが示されている。
近年の調査データによると、PGA(プロゴルフ協会)アシスタントプロの約79%が何らかの形のストレングス&コンディショニングを取り入れている。このデータは一昔前のゴルフコーチの意見(ゴルフをするのに体型を気にする必要はない。という考え)とは大きく異なるようになってきている。
文献の中では、ゴルフスイングパフォーマンスと、ボールスピンやクラブフェースの角度、ロールディスタンス、スイングの運動学、パターの精度、アプローチショットの精度、ターゲットの精度などを含むゴルフショッ トの結果の特徴を把握するために、 様々な指標を調査した。
文献で報告されている最も一般的なゴルフスイングパフォーマンスの指標はCHSである。
CHSはハンディキャップと強く相関しており、熟練したゴルファーはスキルの低いゴルファーよりもCHSが高いことが示唆されている。
難しく書いていますが、要は、スイングスピードが早くなるほど、飛距離は伸びますよ。ということです。
スイングスピードと相関が高いGRF(地面半力)について
GRF(地面反力)は、ゴルフスイングにおいて重要なバイオメカニクスの指標の一つです。スイングの様々な段階で発生し、特にダウンスイングでは重要な役割を果たします。
スイング開始時には後脚から前脚に移動することが観察され、これはクラブヘッドスピード(CHS)を最大化するために体重を適切に分散させる必要性を示唆します。高いスキルを有するゴルファーでは、ダウンスイング全体でより大きなGRFが生成され、下半身の筋活動も高まります。また、GRFの増加はドライビングディスタンスの向上と関連しており、特に若年層のゴルファーにおいては、ピークのGRFが大きいほど飛距離が伸びることが確認されています。GRFはスイングの力学的な側面を理解し、運動能力やスキル向上において重要な指標となります。
スイングのバイオメカニクス
スイングの各フェーズがどのようにゴ ルフのスイングパフォーマンスに影響 するのかを理解することが重要。
ゴルフスイングの開始位置はアドレスポジションとして知られており、 これにより、ゴルファーは股関節をヒ ンジさせ、ニュートラルな静的姿勢、および正しいバイオメカニカル的ポジションにおける動的バランスを確保する。これは、(a)股関節からのヒンジ(b)ニュートラルな姿勢(ニュートラルな頭部位置、胸椎伸展、ニュートラルな骨盤位置 ) 、(c )ニュートラルな肩甲帯、(d)膝のわずかな屈曲、(e)真ん中でのバランス保持を行う。
これらの動作によって適切なスイングが達成されることになります。
バックスイング時
バックスイングが開始されると、ゴルファーの体重が後脚に向かって移動するのがみられ、地面反力(GRF)、足圧、および重心の変化を通じて複数の研究がこの体重移動を定量化している。インパクトの際に大きなCHSを生成するためには、かなりの量のGRFを生み出す必要がある。
ハンディキャップの高いゴルファーと低いゴル ファーの間でGRFの違いが確認されており、よりスキルの高いゴルファーはダウンスイング全体を通じてより高いGRFが生成でき、またダウンスイング中に下肢においてより高い筋活動 を行なうことができる。力の生産はストレングス&コンディショニンつの実践を通じて良い方向に変化させることができる。
これは専門職が考慮すべき重要な特性です。
筋力トレーニングにおいてはここの意識を持ってもらうように地面を押す。地面からの反力を感じれるようになってもらうことなどを取り入れていくことが必要になると考えています。右足でジャンプをする。みたいなイメージですね。
ジャンプをするには地面を強く早く押すことができれば良いので、より素早く高く飛べるようになればそれだけ地面反力を得ることにつながる。ということになります。
バックスイングのもうひとつの目的は、胸椎と骨盤の間の分離を増加
大きなxファクターストレッチは、ハンディキャップの低さや、CHSとボール速度の大きさに起因、ユース世代の間では、より高い運動能力を有するゴルファーは、より大きなxファクターストレッチを生み出すことが認められている。
また伸張反射の増加は、より多くの弾性エネルギー(ssc)を誘発させ、活性化、遠位セグメントの回転速度を高めることが示唆されいる。 xファクターストレッチに関連するCHSの増加は、下半身と体幹の伸張性収縮の活性化に起因するとも議論されている。
xファクターストレッチとは。
立位で行っているxファクターストレッチ骨盤をなるべく動かさずに肋骨を捻る動作です。
これがケーブルモーションを使った可動域を拡大を目的としたxファクターストレッチです。
動画で見るとちょっと分かりにくので写真で解説を入れます。
骨盤を安定させて、上半身を捻っている状態を作る。テイクバックの姿勢とほぼ同じです。骨盤と肋骨の分離っていう感じですね。特別物凄く動かしているっていう感じではありませんが、この動作の最終局面で切り返しを上手くできることでSSCを活用出来る。というのは必須の能力です。
こちらの方がわかりやすいですね。なんでXと呼ばれるのかわかると思います骨盤と肩のラインがクロスするからXです。これはケーブルを使っていないものを写真にしています。
上から撮ると上半身だけが動いているのが見てとれます。
骨盤が動かずに背骨が動き、肋骨が動いている状態になってXの文字がわかりやすく見えます。
高いスキルを有するゴルファーが、ダウンスイングでは下半身を最初に始動し、上半身がターゲットから離れて回旋し続け(その結果、xファクターストレッチがより大きな可動域を伴っている)、以前に認識されていたよりもダウンスイングの時間フレームが長くなり、ゴルフスイングがSSC活動であるとの認識になっている。
*SSCというのはストレッチショートニングサイクルという体の機能のことを指しています。どんなスポーツでも反動を使い素早く動く時に利用するものです。ジャンプの下がってから切り返して上に飛び上がる局面が一番わかりやすいのですが、下がらずにジャンプすることができません。これはSSCという体の機能であり、これを鍛えることはゴルフのスイング動作に活用できます。
ゴルフスイングの身体的な決定要因
ゴルフの動作でより高いスコアであったユースと成人のゴルファーは、 脊柱のコントロールとxファクターストレッチが優れていた。具体的には、ゴルフ動作スクリーニングの4つのエクササイズと、xファクターストレッチの間に関連性があり、前述したように、より速いスイング速度、より速いボール速度、より低いハンディキャップと関連があることが示されている。
すべての年代のゴルファーは、より優れた脊柱のコントロールとxファクターストレッチを達成するために、高いレベルの運動能力を有することが必要とされる。
筋力
筋力が高いゴルファーほど、スクワット、ベンチプレスの最大挙上重量が高かった。(但し、ウェイトトレーニングに慣れていないのに、1RMテストは出来ないため、トレーニングに熟練している必要がある)
反対に筋持久力テストのような15回を何キロで出来る。というようなテストでは相関関係が曖昧になっている。
ゴルフに筋持久力の要素が必要がない。という証拠でもある。
これらにより、より大きな力を生み出すことがCHSの改善に繋がることを示しているが、スイング中の体重移動の適切なタイミングが、GRFの大きさと一致して、その結果としてCHSを大きくしていることが示されている。より高い筋力と運動能力をもつゴルファーがより速いCHSを生み出すことができることを示唆している。
パワー=筋力×速度
筋力は、パワーを発達させるための基礎とみなされており、 適切なレベルの筋力があれば、速い速度での力発揮能力を高めることができる。
ゴルフスイングの速度を考えた場合、力をより素早く発揮できることは重要であるため、力の立ち上がり率(RFD)の評価を用いる必要がある。ダウンスイングは約 0.3 秒と短いため、ゴルファーはゴルフクラブを短時間で加速させる必要があり、これはRFDがゴルファーのスイング速度とキャリーディスタンスに関連している理由を説明するのに役立つ。
*RFD
Rate of Force Developmentの頭文字をとってRFDと呼んでいます。これはスポーツを行う上でとてつもなく重要なことで、ゴルフだけでなくどんなスポーツでも運動の立ち上がり速度を重視します。動き出しを早くする。というイメージです。そして、ここを意識しないとゆっくりと動き始め、パワー発揮という意味で大きなパワーを発揮することができません。0.3秒しかないダウンスイングの切り返した直後から素早く動かす。という感覚です。そこが重要です。
GRF(地面反力)はキャリーディスタンスの重要な決定要因であり、ダウンスイング中に利用できる限られた時間のフレームとともに、下半身のRFDはCHSの重要な貢献要素である。
下半身のパワーの主な評価はカウンタームーブメントジャンプ(CMJ)のパフォーマンスであった。 研究によると、CMJの跳躍高と予測されるピークパワーは、CHS、ボール速度、キャリーディスタンスと非常に大きな相関関係を示している。
柔軟性
ハンディキャップの低いゴルファーは、肩、股関節、体幹、胴体の可動域(ROM)が大きいことが確認されている。
ただし、柔軟性とCHSの関連性については不確かな要素がある。
バックスイングのトップポジションでのxファクターストレッチは回旋速度の増加を引き出し、高いスキルを持つゴルファーがより高いCHSを生成できる可能性があるとされている。
柔軟性が低いゴルファーは、スイング中に代償動作を生じる可能性があり、これが傷害のリスクを増加させ、スイングの効率と一貫性を低下させる可能性がある。
バランス
- 研究によるバランス能力とハンディキャップの関連性:
- ハンディキャップの低いゴルファーは、高いゴルファーよりも優れたバランス能力を持っている可能性があると示されている。
- バランステストとゴルフパフォーマンスの指標:
- ただし、ゴルフパフォーマンスの指標(CHS、ボール速度、キャリーディスタンスなど)におけるバランステストの結果には一貫性がなく、異なる研究で異なる結果が得られている。
- 脚のバランスとドライビングディスタンスの相関:
- 修正版のストークテストを使用した研究では、左右の脚のバランス能力とドライビングディスタンスの間に中程度の相関が見られた。
- バランス能力が高いゴルファーほど、ボールを遠くに飛ばす可能性が示唆されている。
- バランス能力のCHSへの貢献度と研究の必要性:
- バランス能力がCHSへの貢献度を確認するためには、さらなる研究が必要であると述べられています。
- バランス能力の影響:
- ゴルファーがゴルフショットの際にバランス能力を低下させた場合、本能的に安定した状態で骨盤を回転させる能力に悪影響を及ぼす可能性がある。
- 高いバランス能力を持つゴルファーは、大きなxファクターストレッチが生成され、それが大きなCHSを生み出す可能性がある。
まとめ
ゴルフスイングのパフォーマンスのバイオメカニクス的および身体的な決定要因に着目している。現在のデータによると、上半身と下半身の筋力とパワーは、運動能力、柔軟性、バランス能力とともに、 ゴルフのパフォーマンスに関連する資質であるため、定期的な一貫したトレーニングが必要であると考えられる。